ビデオ撮影の基本(3) ビデオ撮影機材編
▼その1 ビデオカメラの管理(1)
ビデオカメラは大変、繊細でデリケートな機材です。内部に使われている部品なども小さくて軽い部品ばかりです。特に家庭用ビデオカメラは外装も薄くできていますので、乱暴に取り扱うとすぐに壊れてしまうことがありますので注意しましょう。ハードディスクやディスク式のビデオカメラの場合は、モーターの回転を正確に安定させる複雑な機構が詰まっています。ですから強い衝撃を与えると記録にエラーが出ることもありますし、修理費も大変高くついてしまうこともあります。
▼その2 ビデオカメラの管理(2)
テープ時代には必ず言われたビデオカメラ取扱の注意事項として「結露」という現象がありました。ビデオカメラやレコーダーなどを寒い所に置いておいて冷たくなってしまったのをいきなり暖かい場所へ持ってゆくとレコーディングに使われるヘッドに水滴が付着して、記録ができなくなるという問題現象です。
こうなってしまうと一度テープを取り出し、クリーニングをかけてしばらく乾かさないと使い物にならなくなってしまいます。最近はテープ記録のビデオカメラは少なくなってしまいましたので、「結露」はそれほど問題視されなくなっていますが、全く「結露」の問題がないわけではありません。(1)でも説明した通り、ビデオカメラの内部は大変精密でデリケートな機構で動いています。そこに「結露」が起きると、やはりなんらかの支障が生じる可能性はあるでしょう。
▼その3 ビデオカメラの管理(3)
「結露」を回避するための方法は、ただ一つ・・「ビデオカメラを冷やさないこと。」です。使用する前には、体に抱えて、または電源を入れて「人肌」程度に暖めておくこと。ビデオカメラが冷えてしまった場合には、いきなり暖かい場所に持って行かず、しばらく電源を入れて抱えて暖めてやることです。
「結露」は夏と冬が起きやすい季節です。夏では冷房のよく効いた部屋にビデオカメラを置いて、直後に炎天下の暑い屋外へ持っていくと危険です。逆に冬では、寒い屋外で使っていて、暖房の効いた部屋に持ち込む時が危険なのです。特に湿度の高い日は最も危険です。
▼その4 レンズのお手入れ(1)
当然の話ながら、ビデオカメラにはレンズが付き物です。何回か撮影に使っていると知らず知らずのうちにレンズが汚れてきます。撮影しているときは結構レンズの汚れに気付かないことが多いもので、撮影後大型TVモニターで見てみると意外に汚れが写っていて、せっかくのビデオ映像が台無し、というようなこともあります。汚れたレンズを清掃するには、いつもどうされていますか?
(1)「きれいなハンカチで拭く。」(2)ティッシュペーパーで拭く。」(3)「水を付けて拭く。」
さあ、どれが正しいと思いますか?・・・正解は次に。
▼その5 レンズのお手入れ(2)
正解は・・・全部間違いです。
日常使うハンカチなどの布やティッシュぺーパーで拭くと、その細かな繊維でレンズ表面に微かな「傷」を付けてしまうのです。何回もそうしたことを繰り返すと大事なビデオカメラのレンズが「傷だらけ」ということにもなりかねません。ではどうしたらいいかと言うと、レンズのお手入れには、専用の「セーム皮」を使いましょう。
「セーム」とは・・「鹿」です。「鹿の皮」なんてどこで手に入るの?と思われるでしょう。ちゃあんと、カメラ販売店、量販店のビデオカメラ売り場に置いているはずです。「セーム皮」はやわかくて、繊維が立たないので昔からレンズのお手入れに使われているのです。ちょっと高く付きますけれど、レンズを傷つけて修理・交換なんてことになったらもっと高い出費になってしまいます。
▼その6 レンズのお手入れ(3)
「セーム皮」で拭くにしても、レンズの表面にホコリや小さな砂などが付着していると、それで傷を付けてしまいます。ですから、まず拭く前に「ブロアー」などで表面についたホコリなどを吹き飛ばしてしまいましょう。また「セーム皮」自体が汚れていては何の意味もありません。
「セーム皮」などのお手入れセットはいつも清潔に保っておくことが大切です。通常、ちょっとホコリが付いたくらいでしたら、ブロアーで除去する程度の清掃でよいでしょう。水滴などがついたら、まずティッシュ等で吸い取って(拭かずに)、ブロアーで吹いて、その後、「セーム皮」で最小限に拭きとりましょう。あまりゴシゴシ拭いてはいけません。
▼その7 レンズのお手入れ(4)
長い期間使わないでビデオカメラを引出しなどにしまっておくと、レンズなどに「カビ」が生えることがあるので注意が必要です。これはレンズだけでなく、手で触る部分には「汗」などの汚れが付着しているので、やはり「カビ」が発生する危険があります。ビデオカメラは使用後はできるだけ、汚れをふき取り、また定期的に専用クリーナーなどで清掃して、しまう場所には乾燥剤を入れておくなどして保管しましょう。特に梅雨時など湿度の高い季節は要注意です。
▼その8 バッテリーの取り扱い(1)
バッテリーは寒い所(10℃以下)では、そのパワーが100%発揮できずに使用時間が短くなったり、撮影自体ができなくなることもあり得ます。寒い場所での撮影にはバッテリーを含むビデオカメラ自体を人肌に温めて、防寒用にタオルなどを巻くとよいでしょう。反対に暑い場所での使用にも注意が必要です。
リチウムイオンバッテリーは熱によって劣化を早めるので、炎天下での撮影には傘などで日差しを避けるか、ハンカチやタオルなどを置き、日差しを遮った方がよいでしょう。また炎天下の車内に放置するのは、バッテリーだけでなくカメラ自体が壊れる可能性があるので止めた方がよいでしょう。
▼その9 バッテリーの取り扱い(2)
ビデオカメラをしばらく使わない時はバッテリーは外しておく方が良いでしょう。着けたままにしておくとビデオカメラの電源を切っておいても、少しずつバッテリーのパワーが抜けてしまいます。そしてビデオカメラにバッテリーを着けたままで長期間放置すると、バッテリーが過放電してしまい、バッテリー自体が使えなくなることがありますので注意しましょう。
▼その10 メモリーカード(1)
最近はビデオカメラに限らず、記録媒体が半導体メモリーカードが主流になっていますね。小さくても大容量で、最新デジタル圧縮技術をもってすれば、高精度ハイビジョン映像も長時間記録することができるし、データをPCへ直接読み込むことも簡単にできます。また、テープのように何回か使用すると劣化するなんてこともありません。こんな便利なメモリーカードですが、一つ弱点があります。
それは・・端子が「丸出し」だということです。私たちはメモリーカードをつい気軽に扱いがちですよね。データを電気信号としてカメラやPCなどの機器と伝達するためにこの端子があることはおわかりだと思いますが、例えば、濡れた手で端子部分を触ったりすると、その部分が腐食したりすることがあり、そうするとデータの伝達ができなくなります。
さらにもっとも危険なのが、「静電気」です。空気が乾燥している時などにメモリーカードの端子部分を触って、静電気が発生すると一瞬でも高電圧の電流がカード内部に流れ込んで、内部のデータを破壊する恐れがあります。メモリーカードを触る時には、ちょっと注意して身体の静電気を除去してからにすることを強くお勧めします。
▼その11 メモリーカード(2)
メモリーカードの取り扱いについて、もうひとつ注意点です。ビデオカメラで撮影中(記録中)にメモリーカードを抜いては決していけません。
それまで撮影してきたデータ自体が使えなくなってしまうこともあります。機種によってはデータ復帰機能を持ったものもありますが、100%の保障はないと思います。また記録中に電源を切ったりしても同じことが言えます。バッテリーで撮影する場合には十分な注意が必要です。バッテリー容量が少なくなって「アラーム」が出たら、記録を一旦止め、バッテリーを交換してから撮影を再開しましょう。
▼その12 メモリーカード(3)
メモリーカードのデータは、PCのハードディスクのデータと同様に不必要なデータはできるだけ、他の記録媒体へコピーしてから削除しておくことをお勧めします。頭から時間軸で記録してゆくビデオテープと違い、メモリーカードの場合は空いている場所へ撮影データを順次置いて行きます。前に撮影したいろいろなデータがいくつも残っていたりすると、空いている場所が分散し、バラバラにデータを置いてしまうことになります。そうするとPCでデータを読み込むときなどにそれぞれのデータを探すのに手間取って時間がかかってしまうことがあります。
どんなものでも同じことが言えますが、特にデータのような手に触ることができないものは、あらかじめきちんと整理しておくことが必要です。これこそが「ファイルベースビデオ制作」のコツといっても良いのではないでしょうか。
▼その13
機材やメディアを購入して、冬季の寒い時期に運送屋さんから届いたときの注意です。「結露」についての注意点は記述しましたが、これと同じ問題です。寒い時期は品物が大変冷えています。暖かい屋内で梱包を開いてすぐに電源を入れたり、メディアを挿入したりするのはやめてちょっと待ちましょう。
なぜなら、暖かい環境に冷えたものを置くと冷たい飲み物のグラスの外側に水滴が付くのと同じように「結露」してしまいます。電子機器やメモリーカードなどが結露している状態で稼働させるのは大変危険です。届いた機材やメディアが冷えている場合にはしばらく常温で放置して、ある程度温めて結露していないことを確認してから電源を入れる(メディアを挿入する)ことを強くおすすめします。
注意しなければいけないことは暖房器具で温めたり、メディアの場合は直射日光に当てたりすることは避けて下さい。あまりにも結露がひどい場合には、ヘアドライヤーを「COOL」で遠くから当てて湿気を飛ばすようにすると良いでしょう。