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風景をビデオ撮影


▼客観的視点(1)

風景撮影というとごく簡単に誰でも気軽に撮影しているかもしれませんが、
しかしこれは人物撮影とともにビデオ撮影の基本の一つといってもよいものです。
風景とは「情景」といっても良いかもしれませんが、
山や海などの自然からビルや家が立ち並ぶ都会なども含まれるでしょう。
風景撮影の基本を押さえることは、映像で何かを表現したい時の
「客観的な視点」の表現を学ぶことでもあると思います。


▼客観的視点(2)

最初からちょっと難しい解説になってしまいましたが、
つまりは映像表現は「客観的な視点」に立った撮影をしないと、
映像作品を見る第三者には撮影者・制作者の「意図」は伝わりにくい、
もっと言えば「独りよがり」の映像表現になってしまいがちなのです。


▼客観的視点(3)

「客観的な視点」とは、わかりやすく言えば、
「他人に説明するような画を撮る」ということだと思います。
撮影者である自分が良いと思った風景を「こういう画を撮れば人に伝わるだろうな」
という意識を持って撮影することが大切だと思います。
何も考えず何となく撮影した風景は、自分では良いと思っていても、
その場にいなかった人には何が良いのか、いまひとつ伝わらないことがあります。


▼客観的視点(4)

例えば、海に沈む夕日が真っ赤で、とても美しいと思って、
ひたすらその夕日のアップを撮って、その場にいなかった人にそのビデオを見せたとしましょう。
見た人たちは「あ?夕日が赤くてきれいだね」くらいにしか思わないでしょう。
その場にいた撮影者が感じた感動の半分も伝わらないのではないでしょうか?


▼客観的視点(5)

それはどうしてでしょうか?
つまり撮影者が受けた夕日の感動というのは、単に夕日だけではないはずなのです。
もちろん赤い夕日がメインの風景でしょうが、
その時の感動をもっと冷静に分析して見て下さい。
「夕景に赤く染まった空や雲」「金色にキラキラと輝く海面」
「その海をゆったりと走る船」「夕日に映えた山や建物や海鳥」等々・・・。
つまり主観的なとらえ方ではわからなかった、「感動という主観」を客観的に分析することで
何を撮影すればその美しさを伝えられるか、が見えてくるのです。


▼客観的視点(6)

「客観的な視点」に立った映像表現とは「観察力」と言っても良いでしょう。
何かを撮影しようと思った時、そのまわりのものもよく観察してみましょう。
主体的な被写体以外にも、それを補完・説明してくれる被写体がいくつも現れてくるはずです。

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▼場所・時間・天気(1)

風景を撮影するときに注意したいことの一つは、撮影する場所です。
パッと見て「この場所がいい」と思ってみても、もう一度周囲を良く見てみてください。
その風景にはふさわしくない枯れ草とか電線とか、看板とかが画面の中に入っていませんか?
そんな時は少し周りを見渡して、移動してみて、もっとふさわしい場所を探してみた方が良いでしょう。


▼場所・時間・天気(2)

撮影する時間によっては、その場所がふさわしくない場合があります。
それは主に太陽の位置や天候によるものです。
風景を撮影したい時に逆光になってしまっていたり、(逆光の方が良い場合もありますが)
極端に影が出てしまっていたり、ガスっていて「抜け」が悪かったりしては、
せっかくよいロケーションの場所でも良い風景撮影はできません。
そんな時には、別な時間に撮影するか、場所を変えるか、
もう少し良い状態になるまで待ってみるか、いろいろ工夫してみたほうが良いでしょう。


▼場所・時間・天気(3)

神社仏閣などの建物、文化財などの撮影には、
太陽が照りつける天気の良い日は良くない場合があります。
建造物の影が色濃く出てしまうので、輪郭がわかりずらくなり、
影の部分の描写がつぶれてしまいます。
また木々の影も部分的に落ちるので、日の当たる部分は色が飛んでしまい、
影の部分は沈んでしまいます。
どちらかというと薄曇りの天気の時の方が建物の撮影には向いているでしょう。


▼場所・時間・天気(4)

新緑や紅葉を撮影するには、日の出ている時の方が良いですね。
曇っている時とは、色の出方が全く違うものになります。
特に紅葉の赤色や黄色は曇りの日には
ほとんど「茶色」のようなくすんだ色に写ってしまうので要注意です。
また逆光にして葉を日光に透かしたように撮影すると、また違った美しさが表現できます。


▼場所・時間・天気(5)

その他、「逆光」にして撮影する効果的な例として、
一つは銅像や古い建物の屋根とかを「シルエット」として表現する場合。
夕日や西日を背景にして、
ビルや工場などを「シルエット」にすると印象的な風景になります。
「シルエット」を表現するにはビデオカメラの「アイリス」「明るさ」
をマニュアルにして調整しないと「シルエット」にならなくなる場合があります。

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▼構図(1)

風景撮影に構図は重要なポイントです。
構図のセンスを勉強するには、風景を描いた有名な絵画や浮世絵などを見てみるのが良いでしょう。
特に浮世絵の「葛飾北斎」や「歌川広重」などは大変ユニークで大胆な構図の取り方をするので、
西洋の画家たちがこぞって真似をしたとも言われているくらいです。
写真撮影とも共通していますが、そうした効果的な構図を学ぶことはビデオ撮影にとっても必要なことでしょう。


▼構図(2)

一概に「こういう構図が良い」とは説明し切れませんが、
一つ言えることは、風景撮影という距離感のある被写体を撮る場合には、手前に何かを置いて撮る
(意図的に置くというより、目の前にあるものを探して、それを入れ込みで撮影する)
という方法は「距離感」を出すには効果的です。浮世絵風景画には随所に見られる構図です。


▼構図(3)

手前に置く何かとして、例えば、花、稲穂、大木、岩、水車、石像、木や石の標識など、
いろいろ考えられますが、バッタやカエルなどの小動物がいれば、逃げないようにそっと近づいて
それらを手前に入れ込みにして風景を撮影するのもおもしろい撮影ができるでしょう。
当然ですが、その場合のカメラアングルはビデオカメラを地面に置くようにしてローアングルで撮るべきでしょう。


▼構図(4)

風景に「距離感」を出すもう一つの方法として、
広い風景の中に「縦にまっすぐに伸びる道路」(あぜ道などでもよい)
を入れ込みにすると遠近感が良く出て美しい風景が撮影できます。
北海道のような「広い大地」を表現するときによく使われる構図ですね。


▼構図(5)

一般的な風景撮影で、「地球面」(地面や海の部分)と「空の面」との配分をどれくらいにするか、
ということを考えながら撮影しているでしょうか?
そんなことはあまり考えずに何となく撮影されている方が多いのではないでしょうか?
しかし多くの方が撮影した風景映像を見てみると、その配分が何となくアンバランスなことが多いようです。
建物や山などの頭が切れてしまっていたり、無意味に空を大きく取ってしまっていたり・・・。


▼構図(6)

撮影する風景内容にもよりますが、基本的な構図としては、
「地球面」と「空の面」の配分は約1:1で良いと思います。
それを基本として、撮影意図によっては「地球面」または「空の面」をより見せたいのであれば、
その配分を少しずらす、という応用で構図を決めるのが良いと思います。
ただ、あくまでもその撮影内容によりますので、
ご自身の目で「美しい」と思う構図をその都度決めることが大切なことです。


▼構図(7)

撮影する映像にタイトルとかを入れたいのであれば、
そのタイトルを入れる部分(普通はセンター部分)にフラットなものを入れるような構図をとる方が良いでしょう。
タイトルが入る部分に美しい花や山の風景とか、ごちゃごちゃとした風景を入れると、
タイトル自体が目立たなくなるだけでなく、せっかく撮影した美しい被写体が死んでしまうことにもなります。
広い風景であれば、あえて「空の面」を思い切って広く取ってそこにタイトルを入れると良いと思いでしょう。


▼構図(8)

風景撮影に限った事ではありませんが、カメラの水平をきちんと取らないで撮影すると、
全体が傾いたおかしな画になってしまいます。
撮影している現場ではきれいな風景に見とれてしまったりして、
意外と水平が狂っていることに気がつかないことがあるものです。
必ず三脚の水準器で合わせるか、撮影する構図と実際の風景を見比べて、
違和感のないように水平を合わせることが重要です。

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